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Corpus 1

「永遠に残るものを」

「Bijoux de famille(ビジュー・ド・ファミーユ)」はmoilが目指したい気持ちの一つ。祖父母から両親、そして子供へと大切なリングを受け継いでいく習慣。なんて素敵なんだろう。

少しうがった見方をすれば、高級品だったから今みたいに買い換えができず生まれた伝統とも思える。だけど劣化しないものでもあるから、古きものを受け継いでいくという感覚は今の人に照らし合わせても肌馴染みがある気がする。だってSDGsとかいうじゃん?

このダイヤのリングは自分の結婚式のために見つけたもの。夫が「何がいいかわからないから、好きなもの買っていいよ」と“ありきたりな指輪”を選んでこない素直さのおかげで巡り合えた。『結婚してください、パカ』には根がお姫様だから憧れたけど、そこかしこに溢れるブランドものだったら、もちろんそれなりに嬉しい。だけど……(自主規制)。

このリングには1932年と刻印が打ってある。どんな意味をもつのかはわからない。受け継いだ時なのか、作った時なのか。仮に後者ならあと10年で見事アンティーク! 一方、あるプロによれば、エドワーディアン期(1901~1910)のもののようで、すでにアンティークを迎えている可能性もある。ダイヤモンドも今では珍しい職人の手擦り、石の特徴に合わせたオールドヨーロピアンカット。

一目惚れだった。メガブランドのダイヤは綺麗であることに異論はない。凄まじい美しさだよね。だけどこのリングにはパヴェセッティングをはじめ、ダイヤにもリングにも手仕事感が満載。職人の味が随所に滲んでる。短く見積もっても1932年より人の手から手へ渡ってきたという魅力もある。moilもこう思ってもらえるジュエリーを作り続けたい。

 そして今は私の手にあるわけだけど、いつか自分の子供が大切な人と一緒になる時、これを渡す日が来るのかと思うと感慨深い。だけど頭の片隅でちょっと思うことがある。

“自分で入り用のリングは自分で買いなさい“と。

 

2022.04.30