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Corpus -11-

「使わないけど大切なもの」

出番は少ないけど大切なものってのは誰しも持っていると思う。それが私にとってはこのレースの手袋とサック。留学する前、フランスに下見に行った時に、クリニャンクールのレース専門店で出会ったものだ。

お買い物をしたクリニャンクールは、掘り出し物を見つけたい人こそ行くべき場所。中世フランスのような格好をした夫婦がやっているヴィンテージのお店みたいなのがゴロゴロしている。そのお店の人がレースの専門店に入っていくのをみて、私もついていき、(えっ?怖くない?!)お目当てのものに出会えたのだ。編み方が綺麗で均一。しかも網目は小さくてハンドニットの技術を十分に感じる。レース編みにしては少し太い糸が日常使いを想起させてくれて、スタイリング欲がムクムク湧いてきた。

そういえば留学しようと思って、パリに行ったときは「オッメェダセェなぁ。オラびっくりだ!」状態だった。どこをみてもペタンコシューズにピチパン、Tシャツみたいな格好で少しもオシャレじゃない。コレクションのスナップでみる足の長い人、カラフルな人、ゴージャスな人!どこ!と結構焦った。

思うにオシャレを頑張る理由の一つはコンプレックスじゃないか。私は腕が太くてそれをカバーするような服を今は無意識で選んでしまう。フランス人はあれだろうか、コンプレックスを感じないというか、人と比較しないから、めちゃくちゃダサいか、奇想天外なファッショニスタが生まれるんだろうか。

手袋に話を戻そう。この品は正直、結婚式にしか活躍できないと思うのだけど、一応服好きとしては、これを普段着に落とし込みたくて試行錯誤した。デニムのセットアップにコレを合わせてボーイズライクになりすぎないようにしてみたり……。(ちなみに手の先にコンプレックスはありませんw)

このサックはキュートなさくらんぼ図案に惹かれて買った。透けたバッグの中に小分け袋として入れておけば、バッグを機能的に保てるし、不意に中を見られても可愛らシールド(←なんそれ?ZAZY風)で見た目も及第点。

今ではもう出番はほとんどないけれど、ふいに取り出してみると学びに貪欲(ひと目を気にしないキテレツ)だったあの頃を思い出せる、手袋とサックはやはり私にとって大切なもの。そうそう、結局結婚式にこの手袋を使ったかと言えばNO。大切なのになぜか使わずに臨んだ私の謎性格。まぁそんな気まぐれさが、人間ぽいですよね。いやこれこそ、パリで学んだひねくれというエスプリ気取りだろうか。

 

2022.07.09