Home > News > Corpus 12

 

Corpus 12


「ヴィンテージはリメイクの母」


「これ私ももってるんです〜!」は買い物中に最も聴きたくないセリフダントツの1位だと思う。服好きの人には、特に禁句なような気がするし、私もお客様に言わないように気をつけているワードだ。

このデニムはもちろんそう言われて買ったものではなく、中目黒のジャンティーク(古着屋)で10年以上前に出会ったもの。デニムガチ勢が見ても多分そこまで興奮するものではなく、どうやら1950年代のものらしい。BIG SMITHの黒タグ。

そういえば大学生の時にデニムオンデニムにハマっていた時期があり、デニムファッションの1910年から2000年までをまとめた45ページにも及ぶファイルを作ったりしていた。(写真6、7枚目)昔からしつこいぐらいのdigり癖があったみたいで、自分の変わらなさがちょっと怖い。

話を戻して、私がこのデニムに惹かれたのは、膝をはじめとして、いろんなところに施された修理の跡。修理についてはこれまで何度か触れているように、その当時の技術や、持っていた人の性格が透ける。修理の跡が1点モノっぽくなって、アンファッション的カッコよさが漂い始める。服好きにとっては、人とかぶらない安心感もある。けどこういうのって、憚らずに言えば着る人を選ぶ。普通の人が着ればただの汚い服だけど、そう見えない人もいる。

「最後から2番目の恋」というドラマに出ていた加瀬亮を覚えている人は多分ほぼいないと思うけど、彼がいい例で、作中売れない作家役のため、首元ボロボロのパーカーを着ていたのだけどそれがかなりお洒落だった。きっとボロくみえるけどいいものだったんだろう。(当たり前かテレビだし)

流行の波乗っていくのもそりゃ楽しいけど、意外と服もサイズを変えたり、ワンピースとTシャツを組み合わせるような、修理ではないけどお手入れをするとフレッシュな気分で袖を通せるし、「これ私も持ってるんです〜」を聞く頻度も減りそうだ。代わりに、お手入れがうまくいくと「これどこで買ったんすか?」と服好きに急に街で声をかけられること請け合いです。

 

2022.07.16