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Corpus 13

「ヴァンブの蚤の市で個性を買う」

インスタグラムのお陰で世界中のいろんな投稿が見られるようになったお陰か、こぢんまりした画一的なカフェが増えたように、SNSとテクノロジーの進歩は私たちの生活の平均点をとんでもなく高くしてくれた。でも一方で急速にモノクロームな世界を作っているような気もしている。


はじめに言っておくと、ネットショッピングをしまくる私、今や海外のファッションサイトやアマゾンなしに生活など無理だ。
そうはいってもこのピアスを取り上げたのにはノスタルジー以上に理由がある。新婚旅行で夫とパリに滞在していた時、クリニャンクールと違って庶民派なヴァンブの蚤の市で買ったこのピアス。

当時moilが駆け出しで、方向性を思案していた。ポップアップに来てくれた人は気づいていると思うけど、私は什器に結構なこだわりがある。食べ物もそうだけど、空間がきれい、器が美しいから料理も美味しく感じる。ということは誰しも感じたことがあると思う。だから什器はジュエリーの次に大事にしている。

その什器として、ジュエリーのアンティークの箱を探していた。案の定、ヴァンブにはあった。確か60€ぐらいだったと思う。茶のレザーで印鑑の箱より小さいぐらいで金の箔押しがある。この手のものは売れるから、どこでも結構値付けは高い。なのに箱にプラスして、ピアスまで入っていた。割と珍しいピアスで耳の後ろから通して、前で止めるようなタイプ。なぜこんな仕様なのかは、よくわからない。

昔の貴族の女性が召使いに服を着せてもらっていた時のなごりで、女性のシャツのボタンが男性とは逆な理由と一緒で、つけてもらうためかとも思ったが、そういう時代のピアスでも前から通して後ろで止めるものが一般的。どなたか詳しい方、教えてください。

この箱にピアス。今では登場機会はほぼないけど、思い出だけは鮮明だ。出品していたマダムといつの時代のものか、どこでみつけたかなど話をして、結局値切ってwという質感がいまでもありありと蘇る。そう、「おもひでぽろぽろ」の妙子さんがパイナップルを初めて食べたときの思い出で苦いようなホクホクなような気分に浸っていたように。

ネットショッピングで服を買うことが普通になった今、果たしてそのもの自体の思い出は妙子さんのように凸凹しているだろうか?実はモノ事態への思いは均一化してはいないだろうか。物語が思い出せないようなものがどんどん溢れていく時、もしかしたら、人から見たおしゃれの平均点は高いかもしれないけれど、そこに個性はないように思う。
実際に対面で買いに行くことで使い方とか、モノ自体の背景とか、どんな風に売られていたかとか、買ったアイテムにいろんな情報が紐づいていると、それが大切で手元に残したくなって、あなたの個性にへと醸造されるのかもしれない。

そんな買い物の機会が最近減っているこんな時代ですが、moil、晩夏にイベントをやりますのでぜひお越しくださいw あなたにとっての個性になるジュエリー、一緒に選びましょう。おもひでモイル、開店予定です!

 

2022.07.23