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Corpus 2

「未来のアンティークを作るために」

よく行く奥渋(若槻千夏がこう呼び始めたとか。マジ?)にこぢんまりとした、でもセンスのいいヴィンテージショップがある。ヨーロッパものが中心で、古いのに状態が美しい。店主は“自身が綺麗なものを着たい”という思いがあるらしく、そんな姿勢が貫かれた大人なお店がある。
今日はそんな場所で出会ったマッチケースが話題。私はタバコの匂いが苦手だから吸わないし、業務用バーナーでアロマキャンドルに火を灯すからマッチは不要。だけどメカニックな仕掛けのシルバー製品ということで目を引いた。
このマッチケースには重要な要素が2つある。一つは年代。1911年に作られたこのケースは銀に9金を施し、さらに細かい彫りのデザインが入っている。服だって大量生産がまだできない時代。そんな時代にマッチを入れるためだけに金銀を使い、持ち歩いていたなんて! 今ならiPhoneケースを24金で作る感じ? 金のiPhoneはもうあったよね? 
重要な要素のもう一つは、「ホールマーク」。
1911年と断定できたのはイギリスのものだから。イングランド王エドワード1世の時代、1300年代からパチモン一掃のため、一定基準の純度以上の金銀製品しか販売しないでよとルール化して刻印を作ったらしい。
この刻印には、メーカーのマーク。スタンダードマークと呼ばれる純度92.5%以上を証明するもの。シルバーの純度を示すもの。作られた年代と場所がわかるようになっている。そこでショップで勧められた〈Jackson’s Hallmarks: English, Scottish, Irish Silver & Gold Marks from 1300 to the Present Day〉という本をスミからスミまで調べ上げたところ、1911年とわかったというわけ。
親から子に受け継がれる指輪や装飾品はもちろん愛着があるに決まってる。ホールマークを調べていてふと思ったのは、moilのモノ自体にも歴史も見いだしてもらいたいなということ。日本の田舎で育った私がイギリスの誰が作ったのかわからないマッチケースに愛着が湧いてしまったように、その歴史が見えるとより愛情を注がずにはいられない。だからmoilもいつかはこんな仕掛けをして、未来のアンティークへと1歩踏み出してみたいと思うのです。だけど、悪しからず。通常のラインにこれは難しい。だから1点ものをつくるmoil O(アートライン)に、それを反映させてみようかなと、ちゃっかり別のものを宣伝させてもらうのでした。

 

2022.05.07