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Corpus 8

「変わらないものは業と価値観」

神田うののお手伝いさんが、彼女の宝石とかバッグを盗んで現金化していたなんていう話、10年前ぐらいだったかワイドショーを賑わした。

2000年代になった今でも人間の業は変わらないもんだなと、このスプーンを見て思い出した。コーパス2のマッチケースで触れた、ホールマークの話。このスプーンはフランス、ヴァンブの蚤の市で購入した。あまりに激安だったから値けおかしくないか?と思って自分で鑑定してみたのだけど、さすがフランスだった。イギリスの統一された企画とは違い、フランス製のものは結構テキトー。

ルーペで拡大してみるとミネルヴァマーク2と鷲マークがある。どうやら1838年以降のもののようで、恐らくシルバー800に金のコーティングがほどこされている。ブランドロゴも入っていたけれど、社名までは辿りつけず、はっきりしないのがいまいちすっきりしない。

でもデザインだけじゃなく刻印を見て製品の時代背景が浮かんでくるのは、ヴィンテージ やアンティークの醍醐味なのは、おりに触れて言っている通り。やっぱり年代もののディグり、楽しすぎる。

ところでこのスプーン、イニシャルが手彫りされている。幼稚園児ではあるまいし、「たろう」みたいに僕のだよ!と主張したかった訳ではないだろうし、持ち主が潔癖症で、「俺のだから使うなよ」と言っていた訳でもなさそうだ。調べてみると17世紀当時、銀食器を持つことは富裕にとってのステータスだったとか。そのため、銀のスプーンを持つ人の多くが自分の家系の紋章やイニシャルをスプーンに彫っていたそうだ。

ここで召使いの出番。やっぱりつい魔が差すんでしょうね。銀のスプーンを雇い主から盗み、スプーンリングへと加工して婚約指輪として贈る。ロマンチックだけど、盗んだものだからね……。やられた気づいた富裕層たちは、その紋章やイニシャルを手掛かりに捜査して、多くの人が捕まったとか。400年以上たった今でも同じことで捕まる人がいるんだから、人間はやっぱり変わらない。

業も変わらないけど、価値観も変わらない気がしている。自分だけの特別な1つに昇華される名入れは、やっぱり特別だ。実は随分前からmoilで新しいイニシャルリングを発売しようと思っている。ただ入れるだけではmoilでやる意味がないので、デザインはずっと考えているが、いつになるやら……。価値観の変化が訪れる前に発表できたらと気長にお待ちください!

 

2022.06.18